今年は鰹が遅かったようで、浜松祭りにもそれほど揚がらなかったような気がする。しかし6月になって、ようやく舞阪港に鰹が入り始めたらしいので、例によってバタバタと買いに出かけた。 魚政に電話で聞いてみると「世間の船は4時過ぎだね。」という。岐佐神社例大祭に魚を献上しない船は「世間の船」、町内に住んでいても、祭りの運営に協力しないやつは「世間の人」というウルトラコンサバティブな土地柄である。4時30分頃店先に着いてみると、近所の主婦でごった返している。魚を買うでもなく、皆何かを待っているようなので、なんだろうと思っているところへ、魚市場から鰹を積んだ軽トラックが帰ってきた。若旦那が手際よく樽から抜いて重さを計るそばから手が伸びてゆく。みんな鰹が来るのを待っていたのだ。
舞阪に住む旦那衆は「世間の人」であろうが、皆鰹の味くらい知っているのであろう。6月だというのに固くなった刺身など食わせたら、女房はそれこそ「質入れ」されてしまうのではなかろうか。「亭主大事」の主婦の間から手を出して一本買って帰った。刺身はあっという間に胃袋に入ってしまったが、お楽しみはこれからである。冷蔵庫で熟成中の塩辛は大分それらしい味になってきた。
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