このところ鰹が安い。舞阪港はまったくのオケラで紀州の船がもち鰹を1本10,000円で売って国へ帰った。その後、街のスーパーでは千葉、宮城で大量に穫れているらしい2.5kg程のものが680円で売られている。こうなると御前崎の地物も同じ値段である。 先日一本下げて帰ったら見事な「ごんじい」だった。「ごんじい」または「ごじ」は「もち」とは逆に、新鮮な魚体の肉質が生ダイコンかショウガのように硬くガリガリしたものを言う。次回魚売り場に若い衆がいたので「おい、この前の鰹、ごんじいだったぞ。」「あ、そりゃすいません。おろしてみてごじだったら、持ってきて下さいよ。別のと取り替えます。この前も良く来る人が「切ったらごじだった。」って持ってきてくれたもんで、別のと取り替えてさせてもらいました。」とまるで一心太助と路地裏のクソじじいの掛け合いみたいだ。鰹100本にごんじいが数本混じっていて、「うちの大将も切ってみにゃ、外からじゃ解らんそうです。」 どうせ鰹は次の日には身が茶色くグニャグニャになってしまうので、切り身にして醤油に漬けて売れば良いのだろう。それより元来シーチキンの缶詰めにしかならないビンチョの、ガリガリの刺身を美味いといってくれるお客さん達は、鰹のごんじいなど御存じあるめい。「上からは明るい治世と言ふけれど、下から読めば治まるめい。」 先日のごんじいはひと節だけそのまま刺身で食って、残りはマリネにしてみたらこれが結構いける。1時間程置いて、玉葱のスライス、レタスのちぎりと混ぜてハワイのポキもどきにして良し、次の日にパン粉をまぶしてフライにしても美味しい。レモンでなくライムというところが「久保田真琴と夕焼け楽団/ハワイ・チャンプルー/1975」なのだ。
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