2007.9.18


今年も昨年同様舞阪港のもち鰹はスカだった。6月末、4艘で100本足らずという、油代を引いたら何も残らん漁獲を、5,000円/kgとこれまた刺身にして出したら、港までのガソリン代も出ないような値段で、馴染み客の手前仕方なく買い入れる小料理屋の亭主に売って、双方泣きべそで別れを告げると紀州の船は国へ帰ったのであった。













しかしこれ又昨年と同様、7月に入ると千葉・福島・宮城方面から町場のスーパーにどっさどっさと鰹が送られて来た。最初の3本くらいまでは喜んで食っていた遠州地方の消費者も、毎週2本づつ食えば7月末頃には大分飽きが来たらしく、仕舞いには200円/kg程と、スーパーの魚屋も何だかヤケぎみであった。冷水塊さえ無ければこれが大方もち鰹で食えるのに、と思うといかにも残念だ。

2.5kg程のものからサクにおろすと1.5kg程になるので、鰹は小魚や鯛にくらべると歩留まりの良い魚だ。これで580円であったから、鶏肉よりも安い勘定になってしまう。これが大軍をなして押し寄せてくるのだから、冷蔵技術の無い1,000年以上前には鰹節などの保存食品とする他は無く、やがてそれが椎茸、昆布とともに日本料理の骨格となったのだろう。

刺身で食い、煮染めで食い、はらもをあぶって食い、食い残しをマリネしておいて翌日サラダにして食い、さらにフライにして食い、と鰹を食い方も色々と研究できた。ハワイのポキ・アクは本来、塩と油とスパイスだけで、酢やレモンなど入れたものは別の呼び方があるそうだ。油も島でとれる何とか言う油が本格と言うことで、まあ、伊豆大島の向こうなんで椿油みたいなもんではなかろうか。







しかもお楽しみはこれだけでは終わらないのだ。刺身を作ったらすぐに肝と腸に塩をし、すき身と一緒に密封瓶に詰めて冷蔵庫に保存する。烏賊の塩辛は3日で出来るが、鰹の塩辛が出来るには最低6週間は掛るのだ。私の場合、刺身の残りで塩辛を作っているのか、塩辛が食いたいが為に刺身を食っているのか、よく分からないことがある。自作の鰹の塩辛はデパートのグルメコーナーに置いてある「酒盗」などにくらべると、それほど旨いのだ。

市販の「酒盗」は鰹節など「加工用」の原料で作られるのだろうから、刺身の残りとは鮮度が違うのであろう。鮮度が違うだけで無く、刺身の残りならば安心して肝を入れることができる。実はこれが旨い塩辛のもとなのだ。世に鮟鱇の肝だの、鮑の肝だのがグルメの長者みたいな顔をしているが、こちらはそれを同じ鰹の腸で自家消化させてしまう、というグルメの終着駅みたいなものである。それにくらべればフォアグラなど日本で言えばガード下の焼き鳥屋で食うのが旨い、単なる肝焼きに過ぎず、グルメとしては入門編であろう。

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081022もどり鰹
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