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設備
間取り


仕上げ材でかくれてしまう配線配管の準備は内装が始まる前に済ませます。内装工事が終わると給排水設備、電気設備などの機器が据え付けられて家が完成します。湯沸器、調理器といった設備機器のメーカー保証期間は7年ということですが、実際には10-20年程度使われる、ということが多いようです。内装のように汚れが我慢できない、というのでなく、機能しなくなって取り替えざるを得ない、となるのが特徴です。

この50年でもっとも変化の大きかったのがこうした設備機器でしょう。1950年代の田舎では、「風呂をわかす」というと

  1. 井戸でガチャポンと水を汲む
  2. バケツで風呂場に運んで風呂桶に水をためる
  3. 薪を鉈で割る
  4. 風呂釜に新聞紙を丸めて入れ火をつける
  5. 細い薪から順に火に乗せてゆく
  6. 湯加減を見て適温になったら保温程度に火を小さくする
  7. 風呂が出来たと報告
という手順が必要でした。同じことが現在では
  1. 温度と水量を指定する
  2. 蛇口をひねる
  3. 風呂が出来たとブザーが鳴る
です。

当時の木製の風呂桶は、10年程で大分汚れて来る-20年程でガタが来て水漏れが始まる、といったものではなかったかと思います。現在でも「風呂は桧でなくては」という方々のために総桧の湯船がありますが、1100x720というレギュラーサイズで60万円とお値段も豪華です。しかも10年-20年という寿命は変わらないので、贅沢なものです。

10年くらいで取り替えてもらえると有り難い、というのが最近のバスタブに対するメーカーのホンネでもあるらしく、「桶」とか「船」といった水漏れに関するものの寿命は、昔からそうしたものと考えられているのかも知れません。

浴室まわりの湿気は木造住宅の構造そのものにとって最も厄介なものです。「風呂場のタイルを剥がしたら、あったはずの柱が腐って無くなっていた。」という事態を防ぐ、しかも外壁に接していることの多い浴室で冬期に快適な断熱性能を保つ、というのは結構コストが掛かります。腰まで、あるいは浴室全体をコンクリートで囲うというようなことをしておけば、50-100年は使えるでしょう。しかしタイルの下の目に見えない部分のコストを誤魔化すと10-20年で建物全体の構造に深刻な影響をおよぼすことも考えられます。

台所でも同じような変化が進行したのがこの50年程のことでした。

浴室に必要なのが「給湯」「換気」くらいであるのに対し、台所に求められる機能はかなり複雑です。そのため給排水設備、加熱調理設備、排気設備、換気設備、収納設備などが入り組んでいます。それらを総合したものがキッチンシステムとなるのですが、良く考えればそれを構成するそれぞれの機器、部材の寿命は全てが同じではありません。それを考えたとき、最近流行の「システムキッチン」という言葉が日本と北米では別の内容を表しているのは面白いことです。

北米では様々なメーカーの機器、部材を組み合わせてキッチンシステムを作り上げるのに便利なように、どのメーカーのものでも互換性があり、寿命が来たものから入れ替えれば良い。というのがシステムキッチンの考え方ですが、日本ではキッチンシステムをメーカー各社がパッケージ化して、どこかに不具合が生じたら、まだ使えるものまで含めてキッチンシステム全体を取り替えてしまう、というやり方をシステムキッチンと称しているようです。北米のやり方に較べて無駄が多く、消費者の満足度も低いような気がしますが、どうでしょう。北米ではそれぞれの住宅に合わせて、そうしたシステムキッチンのデザインをするのは設計事務所ということになっています。

設備機器の寿命という点では業務用の厨房機器も使いでがありそうです。確かに大きくて場所ふさぎではありますが、5人分の食事を20年間作るのと、100人分の食事を10年間作るのとどちらが長もちか、という設定です。住宅用機器では10年も経って部品を交換しようとすれば「新しいものと御取り替えになった方が、」と来そうですが、業務用機器では2-3日で部品が届きそうな気もします。火力が強いので育ち盛りの子供がいて、弁当を作らなければならないときなど、調理時間が半分程度になります。

設備機器の寿命:10-20年

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