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-働く床と座る床を分ける
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働く床と座る床を分ける

江戸時代以前の農家建築では寝る部屋以外は土間ということが多かった様です。立って動き回り、様々な作業をするところが土間であり、 静かに座る、或いは練るところが畳敷きの座敷、と言う分け方でしょう。

「土間=動的空間」「畳敷=静的空間」

という使い方だったのではないでしょうか。 そして土間と畳の間には40cm程の段差が設けられました。実はこれ椅子の座面の高さくらいに当たります。 畳に座った人と、椅子に腰掛けた人の視線の高さが近づいて、部屋全体がぐっと大きく見えるしつらえです。

これは同時に高齢者など、動作の不自由な方の起臥を楽にするバリアフリーデザインでもあります。









床がフラットだと

床に手を付いて腰を上げ、








脚をそろえて、立ち上がる。

足腰にかかる負担も相当なものですが、

頭部の垂直移動が相当なものになるので、血圧障害をお持ちの方など
1-2-3と来て、
4で発症と言うことにもなりかねません。












昔の民家の様に土間と畳座敷の間に段差があれば、

脚を土間に下ろして、立ち上がる。

足腰にかかる負担も軽くなりますが、









頭部の垂直移動が
1-2-3と少ないので、
立ちくらみを減らすことが出来ます。

段端をホイ−ル・チェア用に工夫することも出来ます。


ダイニングテ−ブルとの組み合わせ

床に座る暮らしから椅子に腰掛ける暮らしへ、という部分が増えたのが現代の住宅の大きな特徴です。 椅子に座ってくつろぐというのは、家事など立って動き廻らなくてはならない動作と、同じ空間で行われても違和感がありません。 かっての土間床の居心地を良くしたものと考えてよいでしょう。

これに対して座敷=静的空間の畳敷というのも残しておきたい快適さです。 その時、昔の土間と畳の間の様に40cm程度の段差を設けると随分快適に使うことが出来ます。



お膳の食事が「ちゃぶ台になったのは日清戦争の後」と言われています。 土間から座敷への給仕でも中腰の作業が多く、相当な労働になりますが、


畳にちゃぶ台だと立つ-座るの作業が増えて更に大変です。 座っている人と、立っている人の目の高さが離れるので話が遠くなります。 爺様の視線が新妻の腹部へ、
「お前ら子供はまだいらんのか。」

昔の女性はかまどの陰で泣きましたが、今は流行りの「同居離婚」です。



ダイニングテ−ブルが急速に普及したのは、家事労働の軽減に役立つ、 という点が大きかったのではないでしょうか。


畳の部屋と椅子座の床とに段差が設けてあれば、話が近付き、だんらんが拡がります。

20年程前に、この辺りを計画した住宅に、ちょっと御邪魔してみました。あと数年でご主人が定年を迎えると、いよいよ「書院」の本領発揮、というところです。

殿様か下男か

座敷のある家