2008.12.5
言わんこっちゃない
建築審査会の付言
浜松市都市計画マスタープラン
建築審査会
完成予想図2
Forest Park
完成予想図
ふさわしいか
臨江山の住宅地の景観
ブルーな話
入野臨江山のまちづくり

60/200を考える
住宅地の密度
住宅地の近代
外壁のはなし

2008年11月28日、浜松市建築審査会は臨江山の住民の審査請求に対し、

主文

本審査請求を棄却する


という裁定を下しました。代理人である渡辺昭弁護士は「最後の所に「付言」なるものがあり、リップサービスでしょうが、当方に多少の理解を示した文言が付いています。」と憮然とした表情です。なるほど裁判というものは「争い」であり、「勝ち負け」であると、改めて実感しました。

周りを見ても建設業というのは「造る」仕事であり、医者の様な「闘う」仕事ではないので、どうも闘うのは苦手なのであります。闘わないで未来を造ろうとすると、「談合だ」などといじめられるのですが、あれは建設業が悪いのでなく、発注側が悪いのではなかろうかということが、次第に明らかになって来たのは、喜ばしいことです。

争うのが苦手な建築士が裁定書・付言を読むと、原告側の主張が殆ど認められた形になっています。にもかかわらず裁定書・主文では「本審査請求を棄却する」となっているのは納得できません。まるで別の人物が書いた文章をくっつけたものとしか思えないのです。

シロートが邪推すると付言のほうが浜松市建築審査会、あるいは「浜松市都市景観条例」「浜松市中高層建築物の建築に係る紛争の予防及び調整に関する条例」「浜松市土地利用事業の適正化に関する指導要綱違反」を定めた浜松市議会ならびに浜松市都市計画関連部局の結論であり、主文は誰かが書いたもの、とも考えられます。

私はシロートの邪推に基づいて「付言」を付記した井上会長初め浜松市建築審査会ならびに浜松市都市計画関連部局に敬意を表したいと思います。

ならば「付言」にも係らず、正反対の裁定を下したのは、誰でしょうか。制度的には浜松市建築審査会が断を下すものですが、念のため、上級官庁に「お伺いを立てる」というのが行政の仕来りではないかと思います。そこで参考の為に伺った上級官庁の御意見に従わなければ、再審査請求で逆転裁定が下され、浜松市建築審査会ならびに浜松市都市計画関連部局がおとがめを受ける、という仕組みが目に見えます。

市民が定めた市条例を踏みにじっているのは霞ヶ関が「日本国」、それ以外は「地方」と考えている人々ではないかというのが素人の邪推の行き着くところです。「地方自治体」というのは、あれは「弾除け」なのですね。民主主義というのはなかなか防衛するのが大変なものであります。


付 言

はじめに、建築審査会は、法第九四条に基づき、建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事又は指定確認検査機関等の処分又はこれに係る不作為に不服がある者から出された審査請求の採決を行うための組織である。したがって、当審査会は、本件審査請求に関し、処分庁が法第六条第一項に定めた建築基準関係規定に適合するとして行った確認処分の行為が、違法であるか否かを判断したものである。

しかしながら、当審査会としては、本事案について以下のことを強く思うしだいである。

佐鳴湖西岸は、土地区画整理事業に併せ「フォレストパーク佐鳴湖」構想により、「歴史と自然の香る町」「調和の取れた美しい町並み」「地域のコミュニティーのある町」として発展している良好な住宅地である。

一方、これらの地域と道路を一つ隔てた本件敷地を含む西側及び南側の地区は、昭和四〇年代に施工された土地区画整理事業地域内であるため、風致地区や景観形成地区など景観を保護すべきいずれの地区にも含まれることなく、高さ制限など法の規制が、極めて緩やかな地区である。  その中で、地域住民は、佐鳴湖を望む緑豊かな景観を守る必要があるものとして、相互協調の精神により、景観と調和した良好な住環境を形成・維持してきたものと推測される。

このような住環境の中に、突如として本件建築物のような高層マンションが建築されることが、長年に渡る地域住民の努力の成果ともいえる良好な住環境を損なうことは否定できない。 本建築物の事業主は、自ら、本建築物を建設することにより、地域住民の長年の努力により形成された住民の無形の共同資産とも評価しうる良好な住環境を損ないながら、他方で、「羨望の丘で、眺望と暮らす」とのキャッチフレーズで、その良好な住環境を本件建築物の付加価値としてマンションを売り出し、結果として自己の利潤を追求しようとしているのであり、このような行為は、適法であるとしても、社会的存在たる企業の有り方として多いに疑問が残るところである。

最後に、建築主と地域住民との間で建築計画が十分に話し合われていないことが、今般の事態につながっているものと察する。しかるに、法は最低基準を定めたものであり、これを補完すべく定められた各種の条例や要綱は近隣関係を良好に保つにあたり尊重すべきものであるため、その趣旨に鑑み、双方が相手の立場を尊重した互譲の精神をもっての良好な話し合いにより、早期の解決を望むものである。

平成20年11月25日
浜松市建築審査会
  会長 井 上  泉


2008.12.9

「麻生政権は景気刺激策として政府系金融機関による不動産業者救済のための融資制度を新設する。」というニュースを聞いて、食べかけた朝食を吹き出してしまった人もいらっしゃるのではないでしょうか。全国の空家が500万戸というのに、国民の知らない間にこうした政策がどんどん準備されて行きます。デトロイトの自動車屋が「3兆円くれ。」といって自家用ジェット機ではなく、ハイブリッド車でワシントンまで来る、というサル芝居をしなくてはならない米国とは大違いです。米国では「5,000億づつ、と言うと半額に削られるだろうから、1兆づつ、と吹っかけておいて、」というサル芝居の筋書きまで報道されます。

麻生政権が「まちづくり」を本気で考え、地元住民・自治体の努力に報いようとするなら、こうした融資制度に「ただし地方条例を尊守するものに限る。」という条件を付ければ良いことなのですが、それが欠けていれば「地方条例違反は建築基準法違反ではない」という「無法者」を助ける様なものです。