古山惠一郎
〒430-0946 浜松市元城町109-12
電話 053-453-0693, fax 053-458-2534
e-mail:.ask@tcp-ip.or.jp
http://www.tcp-ip.or.jp/~ask/index.html

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 -2 -3 -4 -5 12 index prev next


その後の浜松

近郊集落

日本を代表する地方工業都市、だとばかり思われがちな浜松市ですが、実は農業出荷額も全国のトップ5に入っています。これも歴史的には明治23年、東海道鉄道の開通によって東西の大消費地に直結した、という地域優位が大きいと思えます。そうした農業の中心地は近郊農村集落でした。

五島村は天竜河口に近く、17世紀の初めから新田開発によって開けた村でした。昭和30年代ごろからの大量消費時代の食生活の多様化に向け、五島村では食卓に彩りを添える食材として、サンドパールの商品化に取り組み、全国的な産地としての地位を獲得しました。高度経済成長期における農業近代化の優等生と言っても良いでしょう。













しかし中国を始めとする振興農業国の台頭の前に、日本全体の農業の将来が不透明な現在、浜松市の近郊農業集落の景観も大きく変わろうとしています。













農業自体も近代化が進んでいます。道路も整備され,日常のショッピングも中心市街地よりも便利になっています。しかし住宅は,と見ると,なかなか恵まれた環境にとけ込み,景観をより優れたものにする,というデザインはなかなか難しい様です。庇を出そうにも敷地が狭くてままならない、という街中の住宅地で育った住宅デザインが、優れたものとは思われないのですが。「都会の生活が進んだ,良いものだ」というこれまでの流れはなかなか変えにくいのでしょうか。

近郊集落の環境の差は敷地面積に余裕があることにもよるものでしょう。敷地面積が500㎡程度あれば、家族数などライフサイクルの変化に応じて建物を3世代くらいは使い回すことが可能です。「30年ごとに全面建て替え」ということでは最低限のコストしか掛けられませんが、建物を使い回すことで、必要な部分には必要な性能を確保できます。見た目は建材の新しさできれいでも、性能は戦災復興期のバラック並、という貧困な住宅を建て続けてプレハブメーカーにご奉仕、というのはいかにもモッタイナイと思います。
住宅の広さについて

大都市への人口集中した時代の「日本は狭くて土地が無い」という神話も、これからの人口減少の時代には見直して良さそうです。浜松のような地方都市では、車で過疎地まで30分も掛かりません。道路整備が進むにつれ、さらに近郊集落の暮らしは快適なものになるはずです。

これまで優れた集落環境を維持して来れたのも,健全な農業経営があったから,と言えるるでしょう。その農業も後継者がいないが委託が広がって,それなりに専業でもやって行ける,というところまでは良いのですが,さらに営農を集約化して,大規模近代化を進める,となると、果たしてこれまでと同じ大規模近代化路線がこれからも通用するのか,ちょっと心配です。思い出すのは米国マサチュ−セッツ州の田舎町で泊まったモーテルの女主人の言葉。

じいさんが働き者で,親から貰った農場を買い足し,買い足しして600町歩まで広げたが,「600町歩じゃあ南部の連中に勝てないが,ここを売ってテキサスに行けば,その金で2,000町歩の農場が買える。」というわけで母屋の敷地にモーテルを建て,自分はテキサスに出かけて5年程立つとのこと。その後はどうかと言うと「国際農業資本と渡り合うにはどうしても5,000町歩は無いと,2,000町歩では話にならん。」と四苦八苦している。

景観、騒音、CO等、最近の「環境問題」と呼ばれるものを思い浮かべてみても,工業が「奪う」産業ではないかと思われてなりません。これにたいして農業は「育てる」産業でした。これまで近郊農業集落に蓄えられて来た「景観を育てる力」をなんとか継承してゆきたいものです。



01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 -2 -3 -4 -5 12 index pagetop prev next