浜松の人に浜名湖についてどう思うかと聞かれると、美しいと思うと心から答えます。周りを取り囲む山が美しい景色を作りだしています。しかし、この７月に自転車で湖岸を一周してみて、「美しい」というのは比較の問題だという結論に達しました。私は一日のほとんどを浜松の街の中で過ごしています。アパートも仕事場のあるフォルテビルから歩いて１０分のところにあり、殆ど自然の美しさに触れる機会がありません。

実際に浜名湖を訪れるような機会があると、街の中とは違う景色が楽しみです。そんなわけで私にとり、日本では浜名湖は素晴らしい場所です。ここで「日本では」というのは良い意味ではありません。私が思うに、本当ならもっときれいな場所なのに、工場が多く建物が建て混んでいて、この場所本来の美しさが損なわれています。自転車で湖の周りを走りながら、私は浜名湖を故郷のマサチューセッツ州ボストン近くの湖と比べていました。そうしてみると私には日本における「美しさ」の意味がアメリカ合衆国とは大きく違っていることが段々わかってきました。

アメリカ合衆国では湖の美しさはそれを取り囲む環境と切り離して考えることは出来ません。例えば浜名湖の様に湖のすぐそばに積み重ねられたスクラップの車の山は、湖水に悪い影響を及ぼしているのは明らかです。私は都市計画家でもなく、この分野で経験もないので批判は出来ませんが、故郷の街の湖の思い出からすると浜名湖の姿は大分違ったものだと思います。

私の故郷にはクァナパーウィット湖があります。浜名湖に比べればはるかに小さいのですがそれでも結構大きな湖です。私が子供の頃、湖にはボートが沢山浮かび、岸にはカントリークラブやレストランが並んでいました。自然保護運動の時代が来ると町当局は湖が汚染され始めており、これは町にとって良くないと判断しました。このために湖からモーターボートを禁止する条例が作られました。これによってカントリークラブの多くも無くなりました。ボートに乗る人が来なくなるとレストランも商売にならなくなり、湖は近代以前の姿に戻りました。

地元業者達が町当局に対して湖関連の商売を潰す気かと激しく抗議したことを覚えています。けれども今年の５月に故郷に帰り、現在の湖の姿を見てみると、あの時にモーターボートを禁止した人達の考えていたことがよくわかります。湖は現在では１００年前と変わらない美しい姿をしており、この美しさはお金では測れないものです。

浜名湖を見ると、ここもかってはけがれない美しい湖だっただろうと考えられます。けれども現在の浜名湖は商売のための場になってしまっています。良いヴァケーションスポットであり、色々なことが出来ます。けれども至るところにゴミが散らかり、水は汚く、景色は貧弱になっています。私が思うに、日本はこんなに混み合っているのですから、数少ない広々としたオープンスペースは保全されるべきではないでしょうか。人は自動販売機とオミヤゲショップの間に挾まっていたのでは本当に自然を満喫することは出来ません。日本の経済発展が一段落したら人々の関心が経済よりも自然に向かうようになることを期待しています。

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