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静岡県建築士会
浜松支部

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「浜名湖の立面図」
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お話しを伺った豊田一仁さんは湖西市のご出身で、現在湖西市にあるマリーナに勤務されています。ご自身もヨットマンであり、子供の頃から親しんだ浜名湖の遊び方に詳しい方です。


浜名湖のマリーナ

浜名湖全体では公認のマリーナが21ヶ所ありまして、組合を作っております。その他、マリーナとして公認されたものではなくても、マリーナに類似したかたちで船艇の保管をなさるところもあります。その数が公認のマリーナの数を超えているのが現状です。

私の勤めるマリーナでは現在の保管艇数はオーナー艇が250隻、マリーナで所有してトレーニングなどに使う社有艇が100艇程になっています。オーナーの方は愛知、岐阜が50%、東三河、浜松が20%、残りの30%が関東、その他となっております。地元の皆さんは友人、知人のツテで適当な湖岸に船をおいておく方が多いようです。

浜名湖全体にかけられていた開発に対する法規制が平成4年度に解除されました。湖岸線については現状を維持しつつ、将来的な利用を考えるという方針がだされていますが、今のところ法規制と同じ指導がされ、具体的な動きはありません。県でも「浜名湖の将来はマリンスポーツのメッカとして考えている。」ということですが、今の所、実施されたのは「三ケ日青年の家」だけです。

「浜名湖環境財団」も設立されましたが、その主要な事業が船舶の係船ステッカーの発行であることでもお分かりのとおり、現在の浜名湖の最大の問題は船舶の繋留です。

現在、浜名湖にはおよそ11,000隻の船があると言われています。このうち、浜名魚協などに所属する漁船は2,000隻で、残りの9,000隻はいわゆるレジャーボート、プレジャーボートと呼ばれるものです。問題になるのはこの9,000隻で、そのうち2,000隻は従来からマリーナでちゃんとした保管がされていましたが、残りの7,000隻について、最終的な繋留権をどうするかが考えられて来た訳です。これらの船は係船施設として認められた場所に繋がれているわけはありませんでした。「浜名湖環境財団」ではこうした船の状況を把握するため、登録制度と繋船設備の整備を進め、現在までに約7,750隻については湖岸に杭を打って繋ぐ場合でも、財団がこれを把握する、ということになりました。ところがこれにも色々抜け道があって、例えばいらなくなった船を廃船にする場合、登録権だけは残しておく。そしてこれを船をもっていながら登録が済んでいない人にまた貸しする。等ということが行なわれています。

浜名湖のマリンレジャー用の水面、昼間遊走が認められた、いわゆる遊走区域というのがほぼ中央航路北端から北半分、新所の弁天松と舘山寺のエボシ岩を結ぶ線から北に設定されています。遊走区域以外では航路を通ることになるので帆走は禁止されています。夜間は網による漁があるので、日の出から日の入まで、昼間だけです。平成5年度からは土日に限ってですが、猪鼻湖と細江湖が追加されました。遊走区域となっている北半分では水深が8m程度、底が泥となっていて浅く、底が砂である南半分とは違っています。南半分にはA航路、B航路、中央航路というように船の航行のための水路が作られています。この航路にも実は色々と問題があります。元々は巡航船、巡航船が無くなってからは観光船の航行のために作られた水路ですので、水深が1.8mとそれほど深くありません。その上、この10年ほどは浚渫をしていません。そのためにあちこちで埋まって浅くなっているところがあります。また施設管理上定められた航路と、実際の状態が違っている部分もあります。A航路の西端の1番杭、2番杭付近では航路標識は曲がっているのに、実際の航路は真直です。これは航路の浚渫をした時、標識どおりに浚渫するのが困難で真直になってしまったものだそうです。

これらの水路は近々海上保安庁水路部に移管される予定だと聞いています。すでに国道から南にある新居港は大型船に利用されており、水深も5mが確保されています。

浜名湖は基本的には都田川になり、河川敷として管理されています。A航路南端から南部は浜名港として巡視船の巡視範囲にあります。これから北側の湖面は新居署、鷲津署等の所轄となるわけです。浜名湖で機関を使って航行する船は河川法3条と、県条例の定める登録をしていただく必要があります。又運転にも自動車と同じように9.9馬力までは河川4級、それ以上については4級と言うように資格が必要です。

マリンレジャーの場としての浜名湖

浜名湖は国内のほかのマリンレジャー基地に較べると、圧倒的に安全なことが挙げられます。浜名湖にはうねりが立ちません。波についても、三浦半島などでは南風であれば8ー10mで一切のレジャーは不可能になります。それが浜名湖では12ー15mであっても技術的にはレジャーボーティングの範囲です。もちろん一切の事故の可能性が否定できないのは水の持つ本質で、これを避けることは出来ませんが。浜名湖は直接外洋に面した他のレジャー基地に較べると格段に安全だと申し上げることが出来ます。

浜名湖の和船

浜名湖で船を使い始めたのは入出港だと伝えられています。入出と言う集落自体がそもそも知波田の人達が漁業のために小屋を掛たのが始まりなのだそうです。湖北の入出、気賀といったところでは漁業の方法が、かっては湖底のかけ上がりと呼ばれる水深の変わり目を行き来しながら魚を追って捕るというものでした。そのためには軽快な舟が必要となります。この地域で伝統的に使われたものは長さ6m強、幅1.5m弱の、多少の波に対しても操船が軽快な様、ヘサキの上がりが大きなものでした。

これに対して新居、舞阪では例えば角建漁には大量の網が必要になります。海苔、牡蛎についても同様で、運搬重視のたっぷりとした舟が使われるようになりました。その他、タキヤ漁では夜、風の無いところに竿をさして出かけるわけですから角張った、田舟に似た舟が使われました。いずれにしても浜名湖の中で使われるかぎりは、波に対する備えはそれほど厳重にする必要はありませんでした。これが外洋に出る必要のある舟では長さが10m程度、耐波性を確保するために舳先の大きく上がった喫水の深い舟が使われました。このように浜名湖と言っても地域毎にそれぞれ異なった舟を使う伝統を持っていました。

こうした和船は全て現代の船と違い、竜骨を持っていません。そのかわり、外板に耐水性の高い木の板を何枚か組み合わせることで強度を出すようになっています。これには杉の最低150年から200年程度のものが使われます。かっては自然にこのような材料が豊富だったものと思われますが、現在では殆ど入手が不可能であり、あったとしても高価であることが和船造りを難しくしています。又現在の造林材を見ると、木目が広く、かって使われていたような緻密なものがありません。これでは現在の木が150年ないし200年という樹齢に達しても、はたして造船材として適当なものになるか疑問です。浜名湖では現在、入出に一軒だけ木造の和船を作っている造船所があります。そのほか新居、舞阪にも和船を作れるかたはまだいらっしゃるようですが、和船の建造技法は今や死に絶えようとしていると言ってよいでしょう。

長い伝統を持つ和船には様々な工夫があり、最近になってこうした和船を見直そうという動きもあります。例えばサッパと呼ばれる小舟には船底に前後方向にかすかなカーブが付けられています。これは櫓を漕いで舟を進める際に、櫓から直接得られる推進力だけでなく、櫓を漕ぐことで生じるローリングの力も推進力として利用しようという工夫です。こうした様々な工夫があり、又それがそれぞれの地域で独自に発達してきた和船は、次第に現代の舟にとって変わられつつあるわけです。ヤマハ発動機、スズキ自動車、あるいはヤンマー等のメーカーとしては、どんな水面でも使える船を目指しているわけですが、半面、これから先もこうした和船の伝統を大切にして行かなくてはと考えております。

浜名湖の水質

浜名湖の水質が悪くなっているということが最近言われますが、直接浜名湖に接している私共でも、このことは痛切に感じております。5年前には夏には無理でも、2月頃のヨットレースではまだ艇からのぞき込めば湖底を見ることが出来ました。これが現在ではかなり難しくなってきております。私達がそうであるのと同様、漁業にとっても水質が重大な問題になっています。

水質悪化の原因としては工場排水、家庭からの雑排水等が原因として挙げられますが、それと劣らず農業排水も水質汚染の原因となっているものだと思います。浜名湖の湖岸では毎年数千トンの農薬が使われているということで、これが最終的には浜名湖に流れ込んできているわけです。あるいは水質にとって工場排水、家庭雑排水よりも危険な物質を含んでいることも考えられます。よく「浜名湖は汚くなってアオコが出るようになった。」と言われますが、これも瀬戸橋から南のことでありまして、猪鼻湖では湖底に生き物が住めない。赤潮が出ることすらまれ。と言う状態になっております。ゴルフ場も同じです。細江湖の漁獲高が減っているのは、上流のゴルフ場の農薬との関係も否定できないと思います。猪鼻湖、細江湖にはそれぞれ川がありますけれども、松見ヶ浦にはそうした流入河川がありません。溜まり水に近いわけで、微量の生活排水でも水質に重大な影響が出ることが考えられるわけです。

浜名湖は陸に囲まれた水面ですので、ほかのマリンレジャー基地に較べると、圧倒的に安全なことを申し上げましたが、それ以外にも他にはない様々な特色をもっています。一つは水質の保全が難しいということです。流れが少ないので、一旦浜名湖に流れ込んだ汚れはなかなかきれいになりません。周辺も次第に都市化が進行していますし、観光による影響も増大しています。産業の発達ももちろん影響しているはずです。たとえばレストランにしても汚水については処理しても、ビールの残りはそのまま流してしまう場合だってあるかもしれない。お客様のなかには飲んだビールを御自分で処理なさって、直接放流される方もいらっしゃるかもしれない。水質の影響を一番受けやすいのは漁業です。残念ながら浜名湖の水産業の水揚げ高は毎年低下してきていることは確かなようです。しかし、私は水揚げは減っても漁業は存続できると考えておりますし、レジャーとも共存できると考えております。

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