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古山惠一郎
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No.13

□世界企業創業の地
□「もの」の展示から「まちなみ」の理解へ
□まちなみへの共感を深めれば都市計画の過半は成功
□コンビニをミュージアム・ショップに









鈴木自動車創業の地はなんと警察署





日本楽器創業の地はなんと郵便局





本田技研創業の地はなんとマンション

中心市街地活性化の為に、「産業資料館」が考えられている様で すが、これについて提案があります。中心市街地のあちこちにある 様々な企業の「創業の地」を、誰が見ても解るようにしたらどうで しょうか。ヨーロッパの街角にはよくそうしたプレートが建物に取 り付けてあります。「フランス革命の時に此処で誰々が殺された」 だの、「アレクサンドル・デュマがここでなんとかいう小説を書い た」だのというものです。先日もテレビで「夏目漱石が下宿してい た」というプレートをロンドンの街角に取り付けている様子が放映 されていました。ヨーロッパのまちのように、有名な小説家はいな くとも、浜松市内に創業の地を持つ世界的な企業はいくつもありま す。そうした企業の生まれた場所が何処か解るようにすることで、 浜松というまちの成り立ちが良く解るのではないでしょうか。

「産業資料館」というと、我々はこれまでに何度か話題にのぼ り、消えて行った「オートバイ博物館」のことを思い出します。 オートバイという「もの」の展示を中心に考えたとき、工業製品の 宿命として各メーカーの「商品」の歴史の展示とならざるを得ず、 メーカー間の調整がうまく行かないで挫折、というのがこれまでの 経緯でした。この間にホンダでは既に栃木県に博物館を作ってし まった様です。このあたりで「もの」の展示をやめて、その代わり に「世界の主要オートバイメーカーを生み出した浜松」という「ま ちの成り立ち」を誰が見ても解るようにしてみたらどうか、という のが提案の内容です。オートバイ以外にも「繊維」などいくつかの 分野で同じことが出来そうな気もします。「もの」の展示をやめれ ば、産業資料「館」という入れ物にこだわる必要も無くなり、中心 市街地全体が博物館の代わりになるはずです。

「大英博物館」「ルーブル美術館」のように、世界中から「名 物」「珍品」を集めて展示する、というのが博物館の原形でした。 水族館も同じように変わった魚を見せる、というものでしたが、米 国の「モントレー水族館」が「目の前にあるモントレー湾の魚を知 る」ための水族館として作られ、それ以降の水族館のあり方を変え ました。エコ・ミュージアムという呼び方で有名になった琵琶湖博 物館もそうした流れにあります。近代産業に関する「もの」の収 蔵、資料保存は「産業資料館」におまかせして、日本の地方都市の 産業近代化を代表すると言っても良い「浜松」という空間・場所 を、誰の目にも解るようにする仕掛けを考えたらどうでしょうか。

1950年代にオートバイメーカー各社にとっては「六間道路が水 平、真向坂が登り5度、追分小の裏へ出る道だかが登り15度」と かで、街路が製品のテストコースだった、という話も聞きます。 「創業の地」以外にも中心市街地には浜松の近代産業を育てた様々 な空間・場所があるに違いありません。エコ・ミュージアムに習っ て呼ぶならば、「トポス=空間」あるいは「ロキ=場所」から、ト ポ・ミュージアムまたはロキ・ミュージアムと呼んでも良いでしょ う。

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現在の六間道路

その昔、ここはポンポンメーカー各社のテストコースだったということで、デアルナラバ、現在のオート バイの世界選手権というのは、45年前ここで競争していたポンポンが大きくなって、世界中のサーキットで 続きをやっている、ということになるのでアリマス。

当時市役所の前には同級生の鈴木君のうちでやってい るモータースがあって、トラックがいつも停まっていました。下校時にはそのトラックの横を通り、

「トッペルセキズストイラズス」

と合唱しながら帰るのでありました。





旋盤、フライス盤の切粉というのは熱でホログラムみたいに七色に光って綺麗なものです。良く遊んで手 を切ったりしました。

あれをアクリルで固めてペーパーウェイトなど作れ ば素敵な浜松土産になり、世界中から来たバイクファンが買って帰るのではないかと思います。

現在既に「大手門跡」「本陣跡」のような標柱が中心市街地にも 建てられていますので、この対象を近代産業にまで広げることから 作業が始まりそうです。ただし、税金を使ってやる必要はありませ ん。それぞれの企業にお願いして「創業の地」の表示に掛かる費用 を負担していただいてはいかがでしょう。バイクメーカーならグラ ンプリで優勝する度に、選手の手形をタイルにして張ってもらう、 なんてこともできそうです。それからネットワーク化です。「創業 の地」というポイントをつないで、浜松というまちなみがそうした 企業を育んだということが解るようにすることですが、これは結構 難しそうです。現在の中心市街地でも公共機関によるかなりの種類 のサインが錯綜していることを見てもそれが解ります。「観光」 「商業」「都市計画」といったこれまでの要素に「産業」という新 しい要素が加わることで、課題はますます重くなるはずです。しか し都市はそうした様々な要素のコラボレーションから成り立ってい るわけで、それが誰が見ても解るようになれば、市民のまちなみに 対する親しみを深めることは確実です。

ガイドブックも必要です。シアトルでは中心市街地の歴史的建築 物に関する「ウォーキング・ツアー・ガイド」と称する立派な冊子を 作っていて、市役所に行けばタダで貰うことが出来ました。聞くと 米国では都市計画予算の大半はこうした「広報費用」だとのことで す。日本でも戦後長く続いた「列島改造」の方が特殊な時代であっ て、市民がまちなみへの共感を深めれば都市計画の過半は成功、と いう時代になりつつあるのかも知れません。

ミュージアム・ショップというのも好きですね。ロンドンでアビー ロードのEMIスタジオ(オヤジだナァ)を見物に行くと、歩いて5 分程の地下鉄の駅に「アビーロード・カフェ」というのがあって「公 式記念品」を売っていました。「創業の地」の近所のコンビニ にミュージアム・ショップをやってもらう、というのも手だと思いま す。オートバイメーカーであれば最寄りのバイク屋さんとか。

ミュージアム・アイテムも工夫しましょう。ガイドブック だけでなく、昭和30年ごろ、市内にバイクメーカーが20数社有った、とい う頃の各社のカタログのリプリントとか。部品の製造過程で出る廃 棄物を使う、というのも考えられますね。鋳造部品のスクラップを メッキしてペーパーウェイトとか、旋盤とかフライス盤の切粉をア クリルで固めてオブジェとかです。祭りの時期になると新幹線の改 札口に各町内の手拭が飾られていますが、あれを見ると繊維関連で も様々なミュージアム・アイテムが考えられそうです。肝心なこと はそうしたミュージアム・アイテムを他所では売れないようにして おくことではないでしょうか。全国同じように見えるコンビニでも 結構「地域限定商品」というのが有ります。ミュージアム・アイテ ムを置いていただく時に「地域限定」というお約束をすることが必 要でしょう。

8月始め、鈴鹿でバイクの耐久レースが行われる前後には国道・ 東名高速道路を全国のバイクファンがゾロゾロと通ります。浜松市 の中心市街地がオートバイのトポ・ミュージアムになり、GPSに のせることができれば、「世界選手権を市内で戦っている浜松」に 全国のバイクファンが立ち寄るようになるのでは、と思います。

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