そんな心配から正月休みを利用して山手町が直面するまちづくりの課題、浜松市全般の都市デザインの課題等を子供にも分るように出来ないか、とミニ絵本を作ってみました。やり出すと結構これが面白いのですね。絵本で何を描こうとしているのか、と振り返ってみると、まちなみの未来を探ろうとしていることに気付きました。

建築設計の仕事が好きなのは「未来を作る」仕事だからだと思って来たのですが、最近になってなんとなく物足りない感じがしていたのは、1970年頃の日本に較べて現在の日本には元気がありません。特に建設業界にはバブルが終わって一段落、みたいな雰囲気が漂っているのではないでしょうか。

住宅にしても「どうせ30年後はどうなっているか判らないし、どっちにころんだところでメーカーのコマーシャルに出てくる明るい未来ぐらいのものではないか。」みたいな醒めた感じがしているような気がします。

それにくらべると地区計画で地元の人と話をしていると、そこで問わなくてはならないのは30年後、あるいは50年後のまちなみの姿です。本当にマンションはバブル期の土地狂乱の副産物なのか、高齢化社会にどうしたら戸建て住宅を維持するのか、といったことまで含めて、未来を作る、という実感が地区計画からは感じられるのです。

郊外の風景を作り出している既存集落が郊外大形店舗によって破壊されつつある、という光景にもあちこちで突き当たりますが、そうした郊外の姿を描く時にも地区計画は使えそうな気がします。この「未来の匂いがする」というのが地区計画にはまってしまう理由でしょうか。

(2005.4.15)



参考書
  • 市民参加の都市計画
     伊藤 滋
     1996
     早稲田大学出版部 1,942円
    「日本都市計画協会」というところで活躍されている伊藤さんが講議をまとめたもの。「地区計画」を取り巻く状況も含め、全体像を捕らえるのに分かりやすい入門書です。
  • 浜松市都市計画マスタープラン
     浜松市
     2001
     まちづくりセンターで売ってマス。2,000円
    神谷前支部長始め有識者が集まってまとめた浜松市の将来像、といったもの。まことに結構な都市象が描かれているのですが、それを実現する為には長い道程が待っているのかもしれません。
  • 基本建築基準法関係法令集
     国土交通省住宅局建築指導課
     建築資料研究社 2,800円
    今まで「オラの設計は合法ダ」ということを確かめるためにしか見てこなかった建築基準法・都市計画法なのですが、「まちづくり」という目で見ると新しい発見が色々とあります。たとえば住宅地には「○○豆腐店」は可で、スーパーに豆腐を下ろす「△△食品」の豆腐工場はダメ、ということで手作りの食べ物は建築基準法に守られているのですね。
  • 市役所・図書館などにはまちづくりの為に税金を使ってまとめられた膨大な資料が眠っています。悪用しそうなやつにはおいそれと見せないようにしているのでしょうが、地区計画をまとめる等、地域の専門家としてまちづくりに活用したい、ということが判ればこうした資料も見せてくれるはずです。




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