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No.20

□郊外型大規模店舗
□流通革命」の正体
□流通システムの巨大化
□実現した「モダンタイムズ」
社団法人 静岡県建築士会会員

古山惠一郎
〒430 浜松市元城町109-12
電話 053-453-0693, fax 053-453-0698
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"Tanger "Outlet: Riverhead, NY Google Maps


SouthCenter Mall, Seattle
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AEON


湾岸B

志都呂のイオンショッピングセンターを見てきた。なかなか壮観だ。米国の郊外型大規模店舗を そのまま持ってきたようなものだ。近郊だけで無く、一日掛かりで買い物を楽しみたい、という向きにはニューヨーク郊外のリゾートでも御殿場のように日帰り旅行圏にアウトレットが立地していた。自家用車でショッピングツアーに行くだけでなく、人が集まればニューヨーク市内までバスで迎えに来てくれるようだ。現地でも敷地が広すぎるので、敷地内循環バスというのをやっていた。店舗の種類、棚の様子も似たようなものだろう。その昔、西海岸の 大形スーパーでポテトチップの棚が100m程もあるのに驚いたが、日本にもそうした時代がやってきたようだ。ジャスコと「国内有名ブランド」「地元有名専門店様」が出店している。「スターバックス」「タワーレコード」に至ってはロンドンでコーヒーを飲もうが、シアトルでレコードを買おうが、店の造りは志都呂と全く同じだ。

こうした米国の郊外大型店では駐車場からバスで店に行く程でなくても、広い駐車場を設けているのが普通だ。ショッピングモールの住所を頼りに衛星写真を探して見ると左図のような姿を見ることができる。しかし我が国では米国のように広大な駐車場を確保するだけの土地が無い、そこで店舗のまわりに駐車場を積み重ねて左下図のような光景が出来上がる。この手の立体駐車場はジャンボジェット1機につき500台分の駐車場が必要な米国の空港で良く見かけるが、実は米国の大都市近郊でもお目にかかることができるものだ。しかし彼の地では用途がちょっと違っている。ニューヨーク・ボストンといった東海岸の大都市では中心市街地に乗り入れる車の量を減らすために「パークアンドライド」政策というのを進めているのだが、その手の駐車場がこれと似た姿をしているのだ。近郊の鉄道駅前に巨大な立体駐車場を作って格安料金で使わせる。「車はここへおいて、電車に乗って下さい」というわけだ。そして都心部の駐車料金は目玉の飛び出るような料金体系にしておいて、そこからの上がりを郊外駐車場の補助にまわす、という仕掛けらしい。マンハッタンではどこにいっても駐車料金が1時間7ドルであるのに対し、橋をひとつ渡ると駐車料金は1日7ドルと分かりやすい。

自家用車に乗った「お客さま」と貨物自動車に載せた「商品」をコンピュータで制御して思い通りに動かす、という巨大なシステムが「流通革命」と呼ばれたものの正体であるようだ。かっては「京浜工業地帯」とよばれ、日本の高度経済成長を支えた東京湾岸にもその姿を見ることができる。羽田空港とフジテレビの間にある太田市場のまわりにはそうした流通業の近代施設が並ぶところがある。店舗が巨大化するのを支えるためには裏側も巨大化していることが、首都高湾岸線からは良く見える。

典型的なのはスーパーで良く見かけるオレンジジュースだそうだ。カリフォルニアの農協が始めたオレンジジュースの近代化はコスト削減のためにフロリダからブラジルへ移り、生産者価格がキロ当たり3円となったものを濃縮して2万トンタンカーで世界中に届けているという。10倍に戻せば20万トンになり、1キロパックに詰めれば2億本となるので、タンカ−1隻で我が国に一人当り1.5本のオレンジジュースをお届け出来るのだそうだ。新聞広告の品が特価158円なら差額の155円は流通システムの取り分となる。浜松の裏山でもみかんを栽培しているが、パックの方が「お買得」なのですね。「作る人」にも「使う人」にも良く見えない、流通システムだけが巨大化していることを象徴しているのが郊外型大規模店舗ではないだろうか。