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目次 はじめに 監修の言葉 1.海の東海道と静岡県 2.千石船 3.江戸時代の港湾施設 4.伊豆の湊 5.駿河の湊 6.遠江の湊 調査を終えて
4-1.網代 4-2.川奈 4-3.稲取 4-4.下田 4-5.南伊豆 4-6.松崎 4-7.土肥 4-8.戸田 1.はじめに 2.戸田村の概要 3.戸田湊の概要 4.まちなみの様子 5.戸田の資源 6.問題点と課題 7.まちなみ再生の施策 8.活性化への施策
9.おわりに


旧道(船頭街)に残る古い家並み


石段の道と石垣積


旧道沿いの石積

4-8-8. 戸田の活性化への施策

8-1. ディアナ号の復元・建造

ディアナ号と戸田号の建造は詳述したが、 戸田は日露交流発祥の地と断言できる貴重な歴史をもっている。 日露交流発祥の地を、もっと積極的にアピールする必要がある。 従来の物見遊山的な余暇活動は、 地域の歴史・文化に触れる研修遊学型のへと重心を移しつつあり、 「見物の旅」は「遊学の旅」へと変わりつつある。 また我が国にとって国際交流が今後ますます重要なものになりつつある。 こうした事を考えると、先人の国際交流の歴史に、 戸田という自然の景観に恵まれた我が国外交の揺籃の地で触れることは、 またとない研修遊学の機会を広く提供することになろう。 このためには、次のような施策が考えられ、 その中心となるものとしてディアナ号ならびに同時代の和船を復元・建造することが考えられる。

  • ディアナ号の本艦および積載舟艇を史実に基づいて復元・建造する。

  • ディアナ号と同時代に戸田及び西伊豆地域で使われていた和船を史実に基づいて復元・建造する。

  • ディアナ号は戸田港にあって、海上レストランおよび博物館、体験学習の場として活用される。

  • 海上レストランでは当時のロシア海軍で実際に提供されていた食事を味わうことが出来る。

  • 博物館は当時のロシア・ならびに欧米諸国の航海術、当時の我が国の航海術、 ディアナ号と戸田および戸田出身者の我が国近代造船への貢献、等につき、展示物を見るだけでなく、 手で触って、動かして、あるいはコンピュータ・シュミレーションなどで追体験することにより、 実感をもって学習できるものとする。

  • ディアナ号の積載舟艇を使って当時のロシア海軍の漕艇体験、航海術の学習、 当時の復元和船を使って櫓による漕艇、当時の漁法による魚釣りを体験できる。

  • 博物館は同時に戸田の地域史研究センターとしての役割を継続し、 一般書、研究書、戸田の歴史上の事実をロマンに置きかえた、文学作品、絵本や小冊子を刊行する。

  • ソ連解体によるロシアの復活により、ロシアとの新たな定期交流を復活する。 例えば「ワーキングホリデイ」制度などにより、ロシアの青少年を招聘し、 夏季繁忙期にはアルバイトスタッフとしてディアナ号事業に参加の機会を与える。

  • 民宿については地域の生活と文化に触れるヒューマンコミュニケーションの施設という民宿の本旨に戻り、 戸田ならではのサービスを中心に置く。徒に高度化、高額化を進めるのでなく、 深海魚の煮付けなど郷土の味を提供する。

  • タラバガニ等の高級魚については歴史的建築物を復元し、 千石船の時代の料亭のサービスを再現するなど、地域密着型の差別化を図る。
8-2. 歴史財としての自然環境の保全

御浜岬は多年にわたって神域として守られ、自然が残されてきた地区である。生活と産業の変化によって貴重な自然が改変されないよう、保全のため、ディアナ号の時代の御浜岬の姿を目標として最善の手段を構ずべきである。

  • 全域について外来自家用車を進入禁止とする。

  • 歩くだけで楽しい遊歩道の仕掛けを整備する。また、渡船に櫓船、ロシア海軍のカッター、ヨットなどの導入を検討する。

  • 造船郷土資料館についてはディアナ号と適宜の用地に移転する。

  • 祭礼ではなるべく車の使用を避け、船の利用を考える。 戸田港は他に類を見ない水深を持つ貴重な自然環境をなしている。水中展望台などの整備によってこうした戸田の自然の特徴に直に触れることも考えたい。また戸田港は今後、マリンリゾートとの共存策を考えざるをえなくなるだろう。戸田の優秀な漁師の技術を、遊びに生かす工夫が必要になる。


地域独自の歴史財の活用を
カリフォルニア州モントレーでは、漁業で栄えた当時の缶詰工場の建物群を観光施設として転用、再利用し、有名になっている。
8-2. 地区毎に歴史的街区の利用を考える。
  • 松城家からおたね川に到る廻船の湊では、かつての石と廻船で栄えた戸田の歴史の生証人として、これを核にして後世に伝えるまちづくりを考える。

  • 宝泉寺、本善寺を核とした地区ではディアナ号の時代を念頭に景観整備を行ない、道竜川沿いにディアナ号の支援施設を整備する。

  • 大浦では漁業の伝統を軸に、旧道沿いの船頭屋敷のまちなみを復元・整備してカニ、深海漁料理を提供するなど、漁業の歴史財を活用する。

  • 役場周辺地区では旧道を使わなくても自動車交通に支障がない道路計画を建てるなどの手法により、旧道沿いの歴史的建築物が将来的にも保全される基幹施設の整備を検討する。
8-4. 戸田ユートピアの創出

戸田は住環境としても素晴らしい条件を備えている。働く場所の問題や、通勤時間が若者離れの要因となって過疎化していたが、田方地区、沼津、岳南地区への交通大系の整備の進捗により、大都市圏への通勤可能範囲として見直されつつある。健康を保証する恵まれた自然、所得を保証する大都市圏への通勤、大都市の孤独と対照的な顔見知りの町民によって作られる21世紀の戸田は、三世帯が生活できる理想郷としても脚光を浴びることになるだろう。 峠から見た戸田の鳥瞰はまさに桃源郷であり、美味・美女・美景と三拍子、ユートピアの条件がそろっている、この美しい環境を保善するには、それだけの努力を必要とする。下水道等の都市基盤整備が急がれる。